大久保利通の茶室「有待庵」は、所有者のご意向(ご厚意)で京都市へ寄附譲渡がなされ、市有化としての道が開けたことは大変喜ばしいことと以前からお伝えしていました。
そもそも、有待庵は個人所有の物件であり、取り壊し寸前での調査等は工期を延ばしてもらう必要があり、それはそのまま所有者の金銭的、心理的負担となることは誰でも理解できることです。そのような中、移築作業にむけて一週間の期間が所有者のご厚意、施工業者のご配慮によって設けられました。
有待庵の現存確認ができた令和元年5月9日(木)から一ヶ月も経たない中での移築保護決定は、京都市およびその関係者のご尽力の賜物だと筆者は考えています。
多くの皆様の善意のおかげで、有待庵は消失せずに済みました。
(令和元年5月20日(月)京都市による調査日に筆者撮影)
(有待庵の内部模型、筆者:監修/田畑氏:作成)
6月3日(月)大久保利通旧邸跡で有待庵の移築保存の為の解体工事が行われました。
専門家の調査を経て行われました。
しかしながら、この解体について、同日、ある団体の代表であり大学 非常勤講師の方が京都市に抗議書が提出されました。
そして、その全文が当事者によりツィッターで全世界に晒されシェア数も100以上を超えました。(註1。最後に記述)
いわく「有待庵の解体は『破壊』である」と。
ちなみに、有待庵の現存確認の初報直後には、抗議文筆者により京都市に提出された要望書では「解体移築」を提案されていました。
ここで、私なりの見解を述べます。
まずは、市は抗議書を受け、6月10日に回答書を出されました。私は京都市の情報公開制度を活用して、回答書を請求し取り寄せました。回答書は決済を経た公文書であり、手続きを踏めば取り寄せることが可能です。
そうしたのは、市からの回答書が抗議文筆者へ提出された後も「有待庵は破壊された」とするツイートが抗議文筆者により続けられ、「破壊なのに保存されたと喜んでいることに違和感がある。」など、尽力者を貶める内容もツイートされ、
有待庵保護に人力されたすべての方を不快にさせるだけでなく、有待庵は破壊されたとする情報が拡散されていたからです。
以下、回答書の概要を三点にまとめました。
●京都市は「有待庵」所有者の意向を最大限尊重して進めていること。
●6月3日からの作業は、複数人の建造物専門家に「有待庵」を確認してもらい、部材の腐朽や後年の修理状況等についての御意見を踏まえ、抗議文筆者が最初に主張していた解体移築という手法が最も望ましいと判断し、移築を前提とした解体作業を慎重に進めた。
●今後も、多くの人の理解、支援のもと所有者の意向を踏まえて歴史的な価値がある「有待庵」を保存・活用していく。
京都市は、複数の建造物に関する専門家の確認の上で最善手として解体移築を判断しています。
筆者も、複数の専門家にご見解を尋ねたところ、重要文化財であっても解体されることがある、今回の場合、曳家工法(そのままジャッキアップして移動させる工法)では、かえって部材を破損させたであろう、との見解を頂きました。
つまり、今回の解体は「破壊」ではない。との専門家の見解です。
以上、多少関わった筆者の私見に過ぎませんが、
何よりも大切にしたいことは、有待庵は、皆様の善意で失われずにすみました。
私は感謝しかありません。本来なら消失していたのですから。。
正しい情報をこれからも伝えていく所存です。
9月2日、京都市は有待庵の移築に係る構想・設計業務委託に係る公募型プロポーザルの実施についてホームページ上で明らかにされました。
思いのほか迅速に事が動いています。9月17日まで提案者を募集し、その後、提案者決定、来年2月末日までに具体的な提案書作成というペースです。令和2年度以降、近いうちの復元移築がみえてきました。
緊急、かつ時間のない中で、関係者が一丸となって、移築保存の為にベストを尽くして下さった結果と捉えています。
改めて、感謝です。
原田良子
「有待庵問題は脳天気かウソつきな人間が関わりすぎてて不快感極まりない」(9月4日午前9:18)
「ここで有待庵問題を御花畑な人間がと述べるとシャレが効いていたんやけどな。」(9月4日同上)
このように特定できる相手(=有待庵保存へご尽力下さった磯田道史先生、平井俊行先生、市長、市文化財保護課担当者や関係者全員)への侮辱をまた全方位へと晒された中傷は耐え難く、本当に残念です。
ご厚意で京都市へ寄附贈与くださった所有者のお気持ちも考えるといたたまれません。
また、このような投稿に、いいねやリツイートをされている方(お仲間や女性も)がいらっしゃる事にも多くの方が驚愕されています。侮辱に加担されていて残念ですね。
最後に、このような誹謗中傷 ツイートはSNSハラスメントである。と指摘される長崎大学 深見聡准教授のご見解も添付いたします。
「ネットは紙の雑記長ではない。このようなツイートを全世界に発信することで関係された方は当然不快になりますし、
ご本人の品位も落とされることになるものと思料いたします。特に受け手の名が秘匿されても関係者が特定可能な場合はSNSハラスメントが強く疑われますね。残念です・・。」
ご理解頂けていることが心強いです。
今回の関係者の努力と尽力が報われることを一番に願って、気持ちを強くもち、今後も見守っていきたいです。
最後まで読んで下さり、有難うございました。
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